「ミリィ、遅くなってすまない」

アスター王子が宿舎の部屋に返ってきたのは、夜中近い時間帯だった。やっぱり今は多忙な時期だから、部屋から叩き出して正解。特に彼は王族でもあるのだから、役割は普通の騎士以上にあるだろう。

「腹は減ってないか?簡単なものだが、持ってきた。汗をかいたなら、また着替えるか?」

アスター王子がまた今朝と同じ状態で、大量のものを両手で抱えて部屋に入ってくる。絶対前が見えてないよね、あれ。

「大丈夫です。ピッツァさんやソニア妃が来てくださいましたし、他にもマリア王女や同僚や…たくさんの人がお見舞いに来てくださいましたから」

苦笑いしながらアスター王子にきちんと伝えておく。特に、異性と関わるとご機嫌を損ねて拗ねた子どもみたいになるのだから、しっかりと伝えておかないとね。

(……ヤキモチ……なんだろうなあ)

今なら、わたしが異性と関わった時のアスター王子の態度の理由がわかる。
あれは、嫉妬なんだ。
わたしがアスター王子が女性と関わった時に感じた、モヤモヤした重苦しい感情。

(でも、それは……きっと、本気で好きだから。この人を失いたくない……と思うから。だから、ヤキモチや嫉妬は感じても仕方ない)

大切なのは、その感情を他人に押し付けない事だ。あくまで自分自身の問題であり、己で解決すべきだろう。