甘える……か。
それは、今のわたしにはとても難しい。
エストアール家の家訓の一つが、自分の事は自分で…だから、わたしは常に自分自身の事は自分で解決するようにしてきた。
きっと、普通の女の子ならば自然と甘えられるのだろうけど。
「……ちょっと、わたしには難しいですね」
「あんま難しく考えなくていいさ。気軽にアスターに頼みごとをすりゃいいんだよ。アンタの言いつけなら、アイツは喜んでなんでもするだろうさ」
ニヤニヤ笑いながらピッツァさんが言うものだから、彼女の意図がストレートに伝わってきた。
「……こき使われるアスター王子が見たいんですね?」
「そりゃ、もちのロンさ!将来の国王陛下があごで使われるなんざ、最高のシチュエーションだからな〜」
がっはっは!と豪快に笑うピッツァさんは、悪気が無いけど少しだけたちが悪い。
「あ、そうだわ。コレはアタシからの差し入れ」
ピッツァさんは思い出したように、テーブルに置いた紙袋を渡してきた。
中身を確認すると、食べやすいよう紙に包まれたバゲットのサンドイッチと、瓶に入った飲み物と何やら薬も…?
「あ、これ。騎士団の寮内にあるレストランのサンドイッチですよね…アボカドとエビのサンドイッチ…」
わたしが一番好きな組み合わせだ。一度、アスター王子と食べたことがあるけれども、初めて食べた時は衝撃的な美味しさだった。
「アスターから聴いてたかんな。アイツは多忙だから、アタシが代わりに買ってきたんだ」



