【完結】捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す2〜従騎士になったら王子殿下がめちゃくちゃ甘いんですが?


甘える……か。
それは、今のわたしにはとても難しい。
エストアール家の家訓の一つが、自分の事は自分で…だから、わたしは常に自分自身の事は自分で解決するようにしてきた。

きっと、普通の女の子ならば自然と甘えられるのだろうけど。

「……ちょっと、わたしには難しいですね」
「あんま難しく考えなくていいさ。気軽にアスターに頼みごとをすりゃいいんだよ。アンタの言いつけなら、アイツは喜んでなんでもするだろうさ」

ニヤニヤ笑いながらピッツァさんが言うものだから、彼女の意図がストレートに伝わってきた。

「……こき使われるアスター王子が見たいんですね?」
「そりゃ、もちのロンさ!将来の国王陛下があごで使われるなんざ、最高のシチュエーションだからな〜」

がっはっは!と豪快に笑うピッツァさんは、悪気が無いけど少しだけたちが悪い。

「あ、そうだわ。コレはアタシからの差し入れ」

ピッツァさんは思い出したように、テーブルに置いた紙袋を渡してきた。
中身を確認すると、食べやすいよう紙に包まれたバゲットのサンドイッチと、瓶に入った飲み物と何やら薬も…?

「あ、これ。騎士団の寮内にあるレストランのサンドイッチですよね…アボカドとエビのサンドイッチ…」

わたしが一番好きな組み合わせだ。一度、アスター王子と食べたことがあるけれども、初めて食べた時は衝撃的な美味しさだった。

「アスターから聴いてたかんな。アイツは多忙だから、アタシが代わりに買ってきたんだ」