【完結】捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す2〜従騎士になったら王子殿下がめちゃくちゃ甘いんですが?


「はあっ!」

夜遅く、摸造剣(もぞうけん)で打ち込みをする。
重さが本物の剣と同じだから、やっぱり木剣とは段違いに扱いが難しくなる。

同じ動作でも疲労度が全然違う。

不得手な上段構えを重点的に、中段突きも組み合わせて木の人形に打ち込む。

(呼吸…間合いに注意して……と)

アスター王子の剣さばきをイメージして動きを真似てみるけど、やっぱり駄目だ。一朝一夕で身につくものじゃない。流れるような動き……川のような、風のような。軽く見えるのに重い、ダメージがすごい剣撃。

(足の運びかな……あとは……)

脳裏に焼き付いた動きを再現してみても、わたしには難しい。上段構えからゆっくりと剣を振り下ろしてみるけど……やっぱり違う。

「うーん……いいや、やめやめ!まずは基本をしっかりしなきゃ!」

従騎士としてもまだまだ中途半端な実力なんだから、今のわたしはとにかく自力を着けなくちゃいけない。しっかりとした基礎が無ければ応用も効かない。

(体力と下半身を強化しなくちゃね。明日から走り込みを倍にしよう)

今まで朝早くに近衛騎士団のある王宮の外苑(およそ10キロ)を1周走ってきたけど、それを2周に増やそう。
それから砂浜ダッシュと川を泳ぐメニューと……
と指折り数えながらいると、後ろから突然声をかけられた。