「アスター王子……わたしは、人より幼い。精神的に未熟です」
「……ミリィ?」
看病中に突然こんな話をしだすなんて、普通は頭がおかしいと思われるだろう。
けれども、アスター王子は困惑しながらもきちんと聴いてくださる。今も、言葉を切れば目で先を促してくれた。
「ずっと、わたしは騎士になることを願っていて、そのためにがむしゃらに努力してきました。だから、普通の女の子が経験してきたであろう、あらゆる事柄がすっぽり抜け落ちています。経験も、知識も、感情も」
「まぁ、そうだろうな…だが、ミリィ」
わたしの話を真面目に聴いてくださったアスター王子は、ベッドのそばに置いた椅子に座りわたしを見つめてきた。
「おまえは、誰かのために頑張ってきた。エストアール家のため、親のため……一人娘であり、跡継ぎである自覚がそうさせたんだろう。騎士となるために、誰よりも弛みない努力をしてきた。たくさんのものを犠牲にして…それは、否定しなくていい」
彼は、布団の上に置いたわたしの手の上に大きな手のひらを重ねてくれた。
「おまえが犠牲にしてきた時間は、今からゆっくり取り戻せばいい。無理に言葉にしたり…焦る必要もない……おまえのためならば、オレはいつまでも待てる」



