【完結】捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す2〜従騎士になったら王子殿下がめちゃくちゃ甘いんですが?



「やあっ!」
「とおっ!!」
「は!!」

無我夢中でランスを突き続けると、やがて馬の脚が鈍くなっていく。

「ミリィ、そろそろやめろ。馬がバテている」
「……はい」

まだまだ続けたかったけれど、アスター王子の指摘通りにトリップは息を荒らげ発汗もしてる。毛の間から白い泡のように汗が吹き出してた。
やっぱりアクアと違いトリップは軍馬としては平均的な体力。前の愛馬のアクアは妊娠中だから、代わりにトリップを借りてるけれど。アクア並みに動ける馬はやっぱりめったにいないんだなあ、と反省。

「ごめんね、トリップ。後でりんごあげるからね」
「ブヒン」

一年前に騎士見習いになってからはずっと近衛騎士団の厩舎(きゅうしゃ)で手伝いをしてきたから、トリップとは顔なじみ。乗り込みやお世話をしてきたからクセはわかってるつもりでも、ついついアクアのように乗ろうとしてしまう。

(やっぱりアクアに代わる馬はなかなかいないなあ……)

手綱を引いて厩舎に帰したついでに、トリップのお世話もする。クールダウンさせたあと、専用の洗い場で桶で汲んだ水で馬体を洗い、ブラッシングしたり蹄の内側の汚れをかきだして油を塗ったり。ついでにりんごもあげておいた。