「やあっ!」
「とおっ!!」
「は!!」
無我夢中でランスを突き続けると、やがて馬の脚が鈍くなっていく。
「ミリィ、そろそろやめろ。馬がバテている」
「……はい」
まだまだ続けたかったけれど、アスター王子の指摘通りにトリップは息を荒らげ発汗もしてる。毛の間から白い泡のように汗が吹き出してた。
やっぱりアクアと違いトリップは軍馬としては平均的な体力。前の愛馬のアクアは妊娠中だから、代わりにトリップを借りてるけれど。アクア並みに動ける馬はやっぱりめったにいないんだなあ、と反省。
「ごめんね、トリップ。後でりんごあげるからね」
「ブヒン」
一年前に騎士見習いになってからはずっと近衛騎士団の厩舎(きゅうしゃ)で手伝いをしてきたから、トリップとは顔なじみ。乗り込みやお世話をしてきたからクセはわかってるつもりでも、ついついアクアのように乗ろうとしてしまう。
(やっぱりアクアに代わる馬はなかなかいないなあ……)
手綱を引いて厩舎に帰したついでに、トリップのお世話もする。クールダウンさせたあと、専用の洗い場で桶で汲んだ水で馬体を洗い、ブラッシングしたり蹄の内側の汚れをかきだして油を塗ったり。ついでにりんごもあげておいた。



