けれども、アスター王子はため息をつきそうな表情になる。
「ミリィの言いたいことは理解しているし、オレも賛成だ。だが……父上とキルシェ女王陛下の間ですでに軍事的協力の約束がなされている。もしも今さら反対すれば、ノプットとの関係が悪化するのは避けられないだろう」
「えっ…もう、そんなに話が?」
わたしが驚くと、アスター王子は眉を寄せて肯定する。なんだか複雑な心境のようだ。
「……“竜騎士の出動を認めないならば、有事の際はわが大切な縁者を保護するため龍騎士の総力を挙げる”……と、脅されたらしい」
「縁者…?」
「マリアンヌと娘のミリィ、おまえもだし、ソニアやアスター王子。おまえもアタシ血縁。ピッツァやら他にもごっそりノプットに保護の名目で連れ去るってこったよ」
あっはっは!と高祖母様がとんでもない事実をあっさりと公表してくださった。
「まー、キルシェは特に義妹のマリアンヌを可愛がってたかんな。マリアンヌとミリィは確実に連れてくだろ。おまけで婚約者のアスターも、一応アタシの血縁だかんな」
……アスター王子まで連れてくなんて脅されたとか……キルシェ女王陛下とは幼い頃に一度しかお会いしたことはないけれども。確かに意思が強くしたたかで聡明そうな御方だった。
あの方が本気になれば、大抵の君主と渡り合えそうだ。



