指先に火を点けた高祖母様は、そのまま葉巻きを炙って煙を吐き出す。妊婦がいるのに…?
「あらあ〜お祖母様、相変わらず特製ハーブの葉巻きがお好きですわね」
ソニア妃がのんびりとそんな事をおっしゃいますが…。
「高祖母様…いくらハーブでも葉巻きは妊婦の前では良くないのではないですか?」
わたしが強めにそう訊ねれば、高祖母様はあっはっは!と豪快に笑う。
「さすがアリシアの孫だな。言い方がそっくりだ。大丈夫だ。この葉巻きはむしろ妊婦にいいハーブばっかだかんな」
「はぁ…」
確かに、わたしはお祖母様によく似てるとは言われるけれども。お祖母様を育てた高祖母様にまで言われるなんて。
「アリシアに似てる…っつうことは、そのブラックドラゴンとやらと対峙した時、殺そうとはしなかったんだろ?ソイツがいくら暴れても、命を奪うことまでは考えなかったはずだ」
「それは確かに、その通りですが…ブラックドラゴンは自らの意思で暴れていたわけではなかったですし、強力な呪術を受けても人は殺さなかった…彼は、必死に呪いと戦っていたのです。
それに、わたしは大したことはできませんでした。神獣の力が無ければブラックドラゴンの呪いを解呪すら出来なかった…」
あの時、自らの無力さを嫌と言うほど痛感した。いくら鍛えていても、強力な魔力の前にはなにもできないと。
高祖母様がおっしゃるようなことは、騎士を目指すなら当たり前だ。無抵抗の生き物の命を奪うなど、あってはならないのだから。



