すぐに足で踏ん張ろうとしたけど、足をかけた岩も崩れて体全体が落ちかけた瞬間、誰がが手を伸ばして腕を掴んでくれる。
「ミリィ!」
見えた顔は顔色が悪いフランクス。彼の咄嗟の機転で滑落せずに済んだ。
「大丈夫か?」
「あ、ありがとう……ぐぐっ」
「右の窪みに足をかけろ。ゆっくり…焦るな」
フランクスの指示でゆっくり、ゆっくり体勢を立て直す。苦しくてつらいけど、彼の負担にならないようになるべく早く復帰しなくては…と、なんとか自力で登れる体勢に戻った。
「ミリィ、ほら。綱を腰に結んでおけ」
フランクスが自分の体と繋ぐ綱を寄越してくれた。でも…。
「ありがとう。でも、もう大丈夫。だから、フランクスは先に行って」
「そうか?無理すんなよ」
「フランクスこそね…体、震えてる」
「こ、これは武者震いってやつだ!」
「ホントに〜?」
「な、なんだよその目は?疑ってんな」
「別に」
強がっているけど、フランクスは筋金入りの高所恐怖症のくせに、わたしのために無理して下を向いてくれているんだ。冗談言って気分を解そうともして…余裕なんて無いくせに。
「わかった、わかった。さっさと先に行きなよ」
「むん!俺も行けるからな!見てろよ〜」
フランクスは雄叫びを上げながら崖上まで登りきり…下を見て気絶した。
(ありがとう、フランクス…でも、悔しいな。ひとりでこなせる体力がほしい……もっと鍛えないと。心も身体も)
口惜しい結果だけど、自分の足りないところを知れたのはよかった。弱点を潰すためにどこをどう鍛えればわかったから。



