ふと、視線が気になってそちらを見れば、ドラゴンがわたしを見ていた。
ブラックドラゴンよりも大きいけど、心なしか優しい目をしている。
紫色の艷やかな鱗はアメジストのようだ。
全体的なシルエットもスリムで優美。
「美しいドラゴンですね」
思わずため息が出るほどの美麗さだ。
ドラゴンにこんなにも違いがあるなんて。
《ーーありがとう、ミリュエールよ》
「えっ!?」
わたしのなかに、ブラックドラゴンと似たような“声”が響いた。まさか、今のは目の前のドラゴンから?
「わたしに話しかけてくれるのですか…?」
「おー、さすがアリシアの孫だな。セシリアに一発で気に入られるなんざ、なかなか無いんだがよ」
高祖母様がおっしゃられた事が事実ならば、なんとなく嬉しい。今までドラゴンはブラックドラゴンとしか接した事がないから、基準がわからないんだよね。
そうだ、とあたしはついでに高祖母様に訊ねてみた。
「そういえば、お祖母様は竜騎士だって事ですが…」
「ん。アリシアはガキの頃から竜騎士になりたい!って言い続けてたからな。ま、アタシがみっちり仕込んでおいたから、竜騎士になるのにそんなに苦労してなかったけどな。
今でも現役で夫婦ともども幻獣の密猟者狩りしてるぜ」
「今でも現役の竜騎士なんですか……」
お祖母様だけでなく、お祖父様まで現役の竜騎士だったなんて…。聞かされていなくてショックというより、すごいという尊敬の念が湧いてくる。
確かに、この話を聞かされたら…竜騎士という仕事に興味を持ってしまう。お父様とお母様は娘のわたしの性格をよくご存知だ。



