騎士を目指す気持ちは誰にも負けないつもりだ。
だけど、筋肉量や持続力は悔しいけど男の子に劣る。
「おい、無理すんなよ。ペース配分考えて登れ」
1メートルほど隣にいたトムソンがそう声をかけてくれたけど、なんとか笑って彼に言い返した。
「ありがとう。少し休んでからなんとか頑張ってみるよ」
わたしが言い出したら聞かない事をよくわかってる彼は、苦笑いをして「お先」とさっさと登り切る。
(悔しいなぁ……1年前の木登りはわたしが勝ったのに)
自分を叱咤しながら、少しずつ 少しずつ登っていく。でも、崖っぷちまであと少し、のところで苦しくて手が止まった。
呼吸が苦しい。酷使した手がガクガクと震えて力が入らない。かきすぎた汗が風で冷まされて体が冷える。
真っ青な顔をしたフランクスが、ヒイヒイ言いながら隣をゆっくり登ってく。
「ミリィ、大丈夫か?顔色が悪いぞ。限界なら棄権しなよ」
ガタガタ震えてる彼にまで心配されてしまった…情けない。
「ありがとう、フランクス。でも、大丈夫だよ。君こそ真っ青だから、無理しないようにね」
そう彼に告げたあと、震える腕を伸ばして突き出した岩を掴む。
(止まるな!フランクスだって苦手な訓練を頑張ってるんだ。甘えるな!騎士を目指すなら、これくらいなんでもないはずだよ!!頑張らないと…頑張れ!)
気力を振り絞って腕に力を込めて、体を上に持ち上げる。
「んぐぐ……あっ!」
でも、手のひらにかいた汗で滑って岩から手が離れ、体が落ちそうになった。



