ゼイレームで竜騎士が活躍したのは遥か昔だ。ドラゴン自体もはや数が少ないから当然稀少価値が高く、度々密猟の犠牲にもなってきた。
ブラックドラゴンが語ったように、ブラックドラゴンの母も龍騎士のパートナーとして活躍したのに、人間のくだらない欲望のため討伐された。
今やゼイレームでは、ドラゴンは密猟対象か討伐対象にしかならない。
「ノプットの龍騎士が今のゼイレームのドラゴン事情を知ったらどう思うでしょうね……」
「ま、少なくともいいイメージは持てないだろ。この国のドラゴンは虐待に近い扱いを受けてるからな」
ピッツァさんの言うとおりだ。昔ならいざ知らず、今や数少ないドラゴン。そのドラゴンたちでさえ、ろくな扱いを受けてない。人間達は自分の欲望のまま、幻獣達を手酷く扱っている。
わたしの愛馬であるアクアの出産を伏せたのも、そのためだ。ペガサスとユニコーンのあいの子だなんて、密猟者の格好の餌食だ。大切なアクアの仔馬を、人間の醜い欲望の犠牲にしたくはない。
わたしがため息混じりで呟くと、アスター王子が「そうだな」と同意してくださった。
「父上も幻獣保護には熱心でいらっしゃるが、やはりお一人では限界がある。だから、オレが王太子になればより強力な対策を立てるつもりだ」
「わたしも協力します!密猟者を一網打尽にできるように頑張りましょう」
アスター王子の言葉は心強い。だから、わたしができることがあればなんでもしよう、と思う。



