騎士を目指す以上、戦いは避けられない。
血を見るのが嫌なら辞めるしかないんだ。
それでも、肉を斬る手応えや血の臭い…相手の悲鳴、苦悶の表情。実際に経験すると、精神的にくるのが正直な気持ちだ。
いくら悪人でも、相手は自分と同じ生身の人間。
躊躇う気持ちは、十分理解できる。
そのうえで、わたしは自分なりのアドバイスをしてみる。
「フランクス、騎士を目指すならば他者を傷つける必要が出てくるのは仕方ないよ。だけど、わたし達が躊躇ったがために、そいつが他の人を殺したり不幸にしたら?それを止めるために、剣を振るうんだって考える。
別に殺す必要はないかもしれないし…一番良くないのは、躊躇ってスキを作ってしまうこと。相手の時間稼ぎや反撃の機会になるやもしれない」
自分の数少ない実戦経験ではあんまり具体的なアドバイスはできないけど、少しでも役立つならばとそう言ってみた。
「……だな」
しばらく真剣を抱えて座り込んでいたフランクスは、やがて立ち上がりふたたび刀身を見つめる。
さっきよりは晴れたような顔をしていた。
「結局、自分次第なんだよな。この剣を良くするのも、悪くするのも、サンキュー、ミリィ」
「ううん、いいよ。ぼくも剣を持つ重みを考えるいいきっかけになったから」
そう、わたしもそろそろ覚悟を決めねばならない。
剣をふるう以上、人の命を奪うかもしれない覚悟を。



