【完結】捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す2〜従騎士になったら王子殿下がめちゃくちゃ甘いんですが?


やっぱりフランクスも嬉しいのか、真面目顔に見えて口元がほころんでる。

「ああ、上司のカイルさんから許しがあったんだ。“おまえも15になるな。覚悟が決まったならそろそろ本物の剣を使ってもいい頃だ”ってさ」
「へえ〜いいな。まぁ、わたしはまだ従騎士になって一年足らずだから仕方ないけど」

本音を言えばめちゃくちゃ羨ましい。わたしは8月に16になるけど、その頃には許されるのかな?
もっとも、従騎士仲間は皆年下でも従騎士としてわたしより遥かに先輩だ。
通常見習いとして小姓になるのは5つ6つの頃なんだから、14歳だったわたしが小姓になれたのは異例中の異例。
その分遅れを取り戻そうとがむしゃらに頑張って来たけど、やっぱり10年近い差は簡単に埋まらない。

「けど、な」

フランクスから嬉しそうな表情が消えて、真顔になる。まっすぐ刀身を見つめた彼の目には、微かに怯えにも似たものが見えた。

「一応、したつもりではいるんだ。けど、これで実際人を斬る……と思うと、揺らぎそうになる時もある」
「え、何が?」

フランクスの言うことは意味がわからない。わからないけど、騎士になるには大切なものの気がする。真面目に訊ねると、彼は数巡の間の後こう答えた。

「人を、斬る覚悟」

さあっと風が吹いて、フランクスの髪を揺らした。