「はあっ!」
その日の夜、訓練場でブラックドラゴンの短剣を使って訓練をした。
短剣だと長剣より扱いやすい分、リーチが短くなる。確実に当てるためにももっと精度を高めないと。
(うーん…やっぱり、今願っても炎は出ないなあ)
ブラックドラゴンの鱗と同じく、見事な黒色に輝く刀身。柄はおそらく角そのものの素材だろう。なんの装飾もないシンプルなデザインだけど、そのほうが使いやすい。最初からわたしのために作られたかのように、ぴったりと手に馴染む。
それだけに、侯爵邸での戦いの時にどうして魔力による炎が出たのかわからない。自分の意思で自由に出せるものではないらしい。
(もし、あれが自分でできるようになれば、もっとアスター王子の役に立てるんだけど)
やっぱり、魔力があると戦いの時は断然有利だ。もしも魔術が使えずとも、マリア王女のようにその性質を見抜いたり感じられる。それは戦う上で貴重な情報となるのだけれども。
「ピッツァさんレベルだと魔力無くてもなんとなく感じられるらしいけど……あたしはまだまだだなぁ……」
「よ、ミリィ。熱心だな」
ため息を着いてると、訓練着を着たフランクスがやって来た。手にしていたのは……。
「……あれ?フランクス、真剣が許されたの!?」
フランクスは訓練用の模造剣ではなく、本物のロングソードを持ってきていたんだった。



