バーベイン侯爵は捕縛され、国王陛下ご臨席の貴族院の議会により裁かれた。
ゼイレーム国内に裁判所は存在しているけれども、貴族や王族が罪を犯した場合は同じ貴族に裁かれる。
これは貴族院創設以来の伝統であり、法律や数々の判例に則った判決がくだされるのが基本だ。

バーベイン侯爵の犯した罪は、主に3つ。
人身売買、違法薬物の流通、幻獣の密猟。
どれひとつ取っても、言い逃れできない重罪だ。
ましてや、これ以外にもたくさんの犯罪を犯しているとなれば、もはや貴族として存続は厳しい。

半月後開かれた裁判では、バーベイン侯爵は罪をすべて認めたらしい。

ただ、“娘だけは助けてください。娘はなにも知らないのです”と裁判長である国王陛下へ懇願したらしい。
ようやく正気に戻って娘の現状を知り、親としての情からそう言ったのかはわからない。

でも、もう。おそらくバーベイン侯爵……今は爵位を剥奪された…と、ローズ嬢が逢える機会は二度とないだろう。

貴族院が下した判決は、誰もが予想通りだった。
バーベイン侯爵家の爵位、身分、財産、領地の剥奪、および没収。犯罪に関わった者の永久国外追放処分、および巨額の罰金。

そして、バーベイン本人は処刑。

これは、もはや誰もが覆せるものではなかった。