(ローズ嬢とトムソンが婚約…?)
貴族の婚約は簡単に出来るものでない。
ピッツァさんが言ったように国王陛下の裁可が必要だし、貴族院でも認可が下りなければならない。
婚約が成立すれば官報にも掲載されて広く知られることになる。
それ以前に、結婚時の様々な取り決めが必要なはず。両家の特許状にもとづいて、両家の親が家の継承や財産分与等の話し合いをしなければならないのだけど。
ローズ嬢の父親のバーベイン侯爵は捕まったし、今後犯罪者となる。
母親は数年前に亡くなられたみたいだし…。兄弟もいない。
今までの罪を考えると、バーベイン侯爵邸は今後国に接収されるだろう。
つまり、ローズ嬢は帰る家が無くなる。
オマケに親類縁者すべてに見捨てられたならば、頼れる人はいないわけか。
なんとなく、見えてきた。
トムソンがローズ嬢との婚約を決めたわけが。
彼は伯爵家の次男だけど、お兄さんが伯爵家を継いで彼自身は父親が持つ2つ目の爵位である男爵位を継ぐと言っていた。
彼が本当に結婚するつもりかまではわからないけど、成人し爵位を継ぐならば妻も貴族となる。
ガーランド家は伯爵家の中では裕福な方だし、領地も広大で豊かだ。たとえ大半をお兄様が継いだとしても、トムソンが継承する土地は貴族として何不自由なく暮らせるくらいの規模はあるだろう。
ひいては、今まで貴族令嬢としか生きて来られなかったローズ嬢にそれなりの暮らしをさせられる…ということ。
トムソンは、そこまで考えて覚悟した…気がする。
犯罪者の娘というリスクある縁談なのに、腹をくくったんだろう。



