「……そう、ですよね。やっぱり…」
そればかりはわたしにもどうにもできない。
当主である親が犯罪を犯したからには、何らかの処分は免れない。
たしか、ローズ嬢に兄弟はいなかったはず。
本来ならば彼女が婿を取り、侯爵夫人としてともに家を継ぐはずだった。
それなのに、バーベイン侯爵は一人娘を王妃にしたがった。侯爵という高位貴族ならばそんな野望を抱いても無理のない話だけど、あいにく王太子となるアスター王子の婚約者はわたしで、彼は妃はわたしだけだと告げてくれた。つまり、他の女性が妃になれる可能性はまったくない。
ローズ嬢がアスター王子にこだわったのは、やっぱり父親から言われたからなのだろうか…?
(でも、もう無理だ…たとえアスター王子が独身のままでも、ローズ嬢は貴族でなくなる)
侯爵令嬢として恵まれた生活を送ってきた彼女に、庶民の生活は耐えられるんだろうか…? 彼女からすれば余計なお世話の心配だろうけど……。
「あ〜そういやな、ローズだっけ?あの娘。身元引受人になるやつが誰もいなかったんだ」
ピッツァさんが頭をガリガリ掻きながら、言いにくそうに話しかけてきた。
「皮肉なもんだよな…権力や金があるうちはちやほやされて、いざピンチになると見捨てる…親類縁者全滅ってこたあ、バーベインは普段からロクなことをして来なかったってコトだわな」
「そう……ですか」
わたしが、と言いたいけど。ローズ嬢からすれば憎いライバル。情けなんて掛けてほしくはないだろう。
「けど、な。意外なやつが身元引受人になった。誰だと思う?」



