「……あの魔術師は捨て駒だな」
「え、そうなんですか!?」
アスター王子の魔術で完全に拘束され、複数人で連行される魔術師を見送ったあと、彼はそんな事を言い出した。
「ああ、魔術師としては中位クラスの実力だな。おそらく、ブラックドラゴンを呪ったやつの数多いる手駒の一人に過ぎない」
「……あれで、ですか?」
信じられない。
百戦錬磨のアスター王子ですら苦戦したのに、あれ以上の魔術師がいるなんて。どれほどの力があるんだろう。
「今回は狭い部屋での戦いだったからな。派手にやって良ければもっと早く決着が着いたが……おそらく、母上の差し金だ。オレとミリィを魔術師との実戦に慣れさせるための。だから、中位クラスの魔術師なら大丈夫と判断してパーティ会場へ放り込んだんだろう」
アスター王子の説明で、ようやくソニア妃の意図が見えて愕然とした。やっぱり、あのひとが無意味にこんな場所に行かせるわけなかったんだ。ちゃらんぽらんでいい加減、気まぐれに見えてもしっかり意志を通すのは息子に似てる。さすが親子だ。
「……まあ、そうでしょうね。御母上様はああ見えて色々なお考えがあるみたいですし」
せっかくわたしが褒めたのに、帰った途端に前言撤回したくなる事態に出くわした。
「お帰り、ミリィちゃん!どう?アスターとちゅーくらいした?会場の壁からこっそり覗いてたけど、踊ってるときはいい雰囲気だったわよね〜」
顔の前で両手を合わせて身体をくねくねさせるソニア妃……もしかしたら、本気でなんにも考えてないのかもしれない。



