(これだ!)
炎のドームを見た瞬間、直感的にわかった。
あれは、魔術師が展開した結界なのだーーと。
(ならば、一か八か! ブラックドラゴン、力を貸して!!)
魔術での攻撃が止んだ合間を縫い、猛ダッシュで走り込んだ。
狙うは、魔術師の結界。炎のなかに一点だけ渦を巻く部分がある。たぶん、そこが脆い部分。
「はあああっ!」
ブラックドラゴンの短刀を上段に構え、勢いよく振り下ろす。当然気付かれた魔術師から攻撃されたけれども、アスター王子が二重に掛けてくれたメダリオンの防御魔術でなんとかしのげた。
(ーー手応え、あり!)
ブラックドラゴンの短刀を炎の渦に突き刺し渾身の力を込めていると、確かになにかが割れたような感触があり、その直後。炎のドームにひび割れが起きて一気に砕け散る。
するとそれを待っていたかのように、アスター王子が魔術師に一気に詰め寄る。
「ミリィ、ありがとうな!はあっ!!」
アスター王子の目にも留まらぬ一撃。それは確実に、魔術師に届いたはず。でも、信じられないことを魔術師が披露した。
その身体が、ふわりと空中に浮かんだんだ。
「……飛んだ!?アスター王子……これは」
「聴いたことがある。魔術を極めた者は空を駆ける事すら可能と。だが、それはつまりこいつが究極に厄介な敵、ということだ」
アスター王子の顔つきが変わり、厳しい目つきになった。
「言い換えれば、ここで捕縛せねばならないということだ」



