「あの炎は魔力による幻影だ。だが、触れればリアルな焼かれる感覚がある」
申し訳ないけど、そのまま放置することにした。
自然と手に戻ってきた短刀を見ると、刀身が紅く輝いている。
「……ブラックドラゴンの力ですね」
「おそらくな…ミリィ!」
「!」
アスター王子がわたしを片手で抱きしめ、そのまま横に飛ぶ。その直後、後ろにあった壁がいきなりひび割れ崩れ落ちた。
(なにも見えなかったのに…!攻撃されたことすらわからなかった)
「アスター王子、ありがとうございます。ですが…ぼくにはまったく攻撃が見えませんでした」
「仕方ない。今のは魔力があっても見切るのは難しかった…ミリィ、左へ飛べ!」
「!」
アスター王子の指示で咄嗟にわたしは左へ、アスター王子は右へ飛ぶ。すると、天井の床が崩れ落ちさっきまでいた場所へ落下してきた。そのまま居たら、確実に大怪我か命の危険がある規模だ。
それだけでなく、床や壁の瓦礫がいきなり浮いたかと思うと、突然こちらへ襲いかかる。
「ミリィ、短刀を中段で構えろ!」
「はい!」
アスター王子の指示ですぐにブラックドラゴンの短刀を構える。ものすごい数が襲い来るけれども…瓦礫はすべてわたしの手前で炎に包まれたかと思うと、そのまま跡形もなく燃え尽きてしまった。
(すごい……これも、ブラックドラゴンの力!?)
瓦礫が尽きるまでなんとかしのげたけど、アスター王子は?と心配になって見れば、彼はもう行動を起こしていた。
「ミリィ、そのままでいろ!こいつはオレが捕縛する!」
アスター王子が向かった先は、黒装束に身を包んだ魔術師らしき人間だけど。その姿を見た瞬間、全身が震えるほどの本能的な恐怖を引き出されるほどだった。



