(躊躇うな!相手は敵なんだ。余計な温情をかけたらこちらがやられる!)
犯罪者相手に甘っちょろいことは言っていられない。騎士を目指すならば、こんな程度でいちいち葛藤するな、と自分に言い聞かせた。
(あ、アスター王子が!)
複数人と切り結んでいたアスター王子の斜め後ろで、潜伏していたらしい黒装束をみつけた。吹き矢らしき筒を持ち、彼を狙っている。
(間に合え!頼む、ブラックドラゴン!!)
ブラックドラゴンの角で作られた短刀を投げると、腕に突き刺さった刃はなぜか紅い炎を発して刺客の身体を包み込んだ。
「うわあああ!」
そのまま刺客はドサリ、と落ちたのだけれど。それがよりによってアスター王子が戦っていた場所で。刺客は複数の黒装束たちを巻き込み、一緒に炎に包まれている。
「!」
さすがに生きたまま焼け死ぬのはあんまりだ!とわたしが助けようとすると、アスター王子から「待て」と止められた。
「なぜですか!?さすがにこのまま放置ではあんまりでしょう」
「奴らの様子をよく見てみろ」
「え?」
アスター王子の冷静な声に腹が立ちもしたけど、渋々もう一度刺客達の姿を見てみたら……
(あれ?なにも焼けてない)
普通、火に焼かれたならたちまち服や髪など焼けるはずだけど…刺客も黒装束も、不思議なことに何一つ焼けてないし、煙も出ていない。でも、熱いのは確からしくめちゃくちゃ苦しんでのたうち回ってる。



