「!!」
ぶん、と空気を切り裂いて長大な刃が襲い来る。咄嗟に姿勢を低くして避けたあと、足首のスナップを利かせ相手の懐に飛び込んだ。
「はっ!」
ひとまず、短刀で利き手を狙う。
けど、やはり反射速度が尋常じゃない。突き出した短刀はすぐにかわされ、逆に反撃を仕掛けてきた。
すんでのところで刃を交わし、次は足を狙うけど。わかりやすくすぐには攻撃しない。
「やあっ!」
頭を狙った蹴りを交互に入れて、わざと大ぶりの攻撃を繰り返す。2度、3度。防がれても身体を反転させて、すぐに攻撃。その合間に黒装束の敵はこちらを攻撃してくるけど、すべて受け流す。
そして待ちに待った、相手の注意が持っていかれた瞬間がやってきた。
(わたしの速さは、誰にも負けない!!)
「たああっ!」
ブラックドラゴンの短刀を握りしめ、今までにないスピードで足への攻撃を繰り出す。
ーー手応えは、確かにあった。
「ぐっ」
黒装束はうめき声を上げたあと、そのままどうっと倒れた。その後すぐ武器を取り上げ素早く縄で手足を拘束しておく。これ以上傷つける必要はないからだ。
縄で手足を縛っている間、体中から汗が吹き出し指が震えた。自分が人を傷つけた反動が、今になってじわじわと来てしまう。
(でも、これは騎士ならば割り切らなければならない。相手はもっと人を傷つけた奴ら……それに、これ以上犠牲者を出さないために必要なことなんだ)



