部屋の様子を窺っていたアスター王子が幾重にも張られていた結界を破ると同時に、わたしへ合図を送る。
「……突入する。行くぞ!」
「はい!!」
バン、とアスター王子が勢いよくドアを蹴破ると、開いた瞬間に部屋のなかから黒い靄が広がる。またぞわりと肌が総毛立つけれども、それを無視してアスター王子の後に続き部屋へ足を踏み入れる。
「!!」
突然、黒い影が目の前に広がったかと思うと、白刃が煌めいた。襲撃と瞬時に判断し、手にしていたブラックドラゴンの短刀で一撃目を防ぐ。
ガキン、と金属独特の音が響いたのはこちらだけでなく、アスター王子の方もだった。
しかも、彼は前後左右で挟撃されている。
「アスター王子!」
「……余所見をするな!はあっ!」
腰に提げていた剣を抜刀したアスター王子は、気合い一閃。わずか一太刀で、周囲にいた襲撃者を斬り捨てた。
その疾さと正確さは、最近ますます磨きがかかってきた気がする。
(そうだ!わたしも騎士を目指す者。いざという時は躊躇していられない)
とはいえ、わたしは圧倒的に実戦不足だ。敵意ある相手に予測不能なトリッキーな動きをされると、一撃をかわすのも精一杯。
(だけど、アスター王子の足手まといになるわけにはいかない!…次は、ここだ!)
予想した一撃が来て、なんとかそれを防いだ後に相手の足を狙って蹴りを入れるけど、かわされてしまった…でも。それが狙い。
(わたしの持ち味は軽さと…スピード!)
次は、武器を持った利き手を狙った一撃…かわされたのは想定内。そこで、すぐさま身体を反転させもう一丁あった短刀で攻撃。かわされかけたけど、手応えは確かにあった。



