【完結】捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す2〜従騎士になったら王子殿下がめちゃくちゃ甘いんですが?


マリア王女は着けていた赤い仮面を外しながら、にやりと笑う。そんな彼女に、兄のアスター王子は複雑そうな顔を見せた。

「頭の回転が早すぎるおまえが怖いが……関わるなと言っておきながら、こんなふうに頼るのも情けない話だ。だが、おまえが安全に帰るためでもある。すまないが頼むぞ」
「よい。わらわもそろそろ飽きてきたところじゃ。早う帰って2人きりになりたいものじゃ。のう、フランクス」
「えっ」

マリア王女が腕組みをしたままフランクスに寄りかかりそう甘えると、彼はびしっと固まってしまった。

「ふふふ、フランクスはかわいいのう」
「ゴホン。マリア、いちゃつくなら後でやれ」
「アスター兄上、羨ましいと顔に書いてあるぞ?」
「そんなことはない!」

マリア王女の手にかかればアスター王子はいつも型無しになってしまう。異母妹にからかわれたアスター王子は、もう一度咳ばらいをして真面目な顔に戻る。

「……とにかく、ローズ嬢の保護とマリアの安全な帰宅を最優先にする。トムソン、フランクス、ミリィ。よろしく頼むぞ」
『はい!!』

わたしとフランクス、トムソンは反射的に元気な返事をしてしまい、思わず口を手で覆う。いけない、いけない。ここはパーティ会場。いくらアスター王子の遮音の魔術がかかってはいても、極力目立つことは避けないと。

「オレはミリィ、ピッツァ、レトムとともに侯爵邸を捜査する。マリアの協力者もありがたく活用させてもらうぞ」
「この笛を使うとよい。この音を合図に反応するはずじゃ」

マリア王女は首に下げていたネックレスから貝殻のような笛を外し、アスター王子に渡した。

「通常の人間には聴こえぬ音じゃが、訓練した者のみ聴こえる特殊な笛じゃ。アスター兄上の助けになるなら幸いぞ」