「アスター王子、腕が痛いんですが」
「あ、ああ……すまない」
腕が抜けるかと思うほどずいぶん強い力で引かれていたから抗議すると、さすがに離してくださったけども…。まだ、不機嫌さを残してる。
「まだなにか怒ってます?お腹が空いたんですか?」
「違う!」
「じゃあ、ぼくがモテたからですか?」
わたしがそう指摘すれば、アスター王子の足がピタリと止まり、押し黙った。なら、これが原因かとため息を着きたくなる。
「ぼくがモテるのが、そんなに悔しいんですか?」
「……そうじゃない」
「何が違うんですか?ハッキリおっしゃってくださいよ。察してくれ!なんて繊細さはぼくには無理ですからね」
「……」
また、アスター王子が黙った。
仕方ないなあ、とわたしは特大のため息を着いて慎重に言葉を選んだ。
「大隊の皆さんは良い方ばかりですよ。未熟なぼくを気にかけてくださって…かわいがって頂いてるんです。ぼくも早く皆さんに追いつきたいですから、時間が許す限りはお邪魔させていただきますからね?
あ、もちろん皆さんの鍛錬の邪魔にならないようにしますから…なにせ、6月に初めての馬上槍試合があるんですから。それまでに鍛えたいんです」
6月にあるアルベルト殿下とソフィア公爵令嬢の結婚式。その際にはお祝いの馬上槍試合大会が開催される。従騎士以上が参加できるから、わたしには初めての大会になるんだ。



