【完結】捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す2〜従騎士になったら王子殿下がめちゃくちゃ甘いんですが?


(……めんどくさいなぁ……アスター王子、ご自分のモテモテぶりを自覚してくださいよ……)

はあ、と小さくため息をつくとローズ様の目と柳眉がますますつり上がった。

「あなた……いい加減に……!」

カッとなったローズ様が、口元を隠していた扇をそのまま振り上げる。打たれることはわかっていたけど、あえて受けるつもりでいたら、彼女の手を誰かが掴んで止めた。

「なっ…!だ、誰なのですか!?」
「トムソン・フォン・ガーランドですが?」

ローズ様の暴力を止めたのは、クセのあるくすんだ金髪を短めに刈り、オレンジがかった瞳とそばかすを持つ従騎士仲間のトムソンだった。
ちなみに彼は伯爵家次男であり、近衛騎士団副団長であるわたしのお父様の従騎士でもある。

1年前はひょろひょろで背もわたしより低かったのに、この1年でぐんと伸びて今では追い越されてるし、筋肉もついて別人のように成長した。突っかかってきた性格も落ち着いて、いまでは仲間と認めてくれてる。こうして庇ってくれるのもありがたい…けど。

このままでは、トムソンが咎められてしまう。

「トムソン、手を離して!ぼくなら大丈夫だから」
「そんなわけにはいかないね。あんたはアスター殿下の婚約者で、本来なら妃殿下と同等の立場だろ?
なら、王族に準じる立場のあんたを護るのは近衛騎士団に所属する従騎士の俺の役割だよ」

屁理屈というか、なんというか…トムソンの言い分には呆れたけど、なんだか笑えてきた。