「え、そうですか?わたしはいつもいつもあなたに頼ってばかりの気がしますけど…訓練のことや色々と」
「そんな事はない。それは上司として当たり前の事ばかりだ。ミリィ、おまえはもっと周りを頼れ。自分一人で背負うな…特にオレには…もっとわがままを言って甘えていいんだ」
「…甘える……ですか……」
アスター王子に言われた事はいまいちわからないけれども、どうやら迷惑に思われていないようでほっとした。
「オレは、おまえに頼られて潰れるほど不甲斐ない男ではないつもりだ」
「はあ……」
たぶん、アスター王子はいい事を言ってるんだろうけど…。今はそれどころじゃないのでは?
「……反応が薄いな」
「すみません、後でまたいくらでも聞きますから、まずはローズ嬢を探しましょう」
「…………」
「あれ?なんで白目になるんですか?」
「……なんでもない」
「ふふふ、さすがのアスター兄上も、ミリュエールにかかっては型無しじゃのう!」
マリア王女が茶々を入れながら、しっかりとこちらのフォローをしてくださったのはさすがだ。
「ローズとやらは、あちらにおる赤いドレスの女か?」
マリア王女が確認してきた通りに、ダンスフロアの隅にローズ嬢の姿が見えた。誰からも申し込みが無いのか、いわゆる壁の花状態だ。
侯爵令嬢にとっては屈辱的な状況だろうけど、こちらにとって都合がいい。
「トムソン、ローズ侯爵令嬢にダンスを申し込んで来い。この紋章の指輪を貸してやろう。これを見れば断ることはないはずだ」
アスター王子が近衛騎士の上司らしく、指輪を渡しながらトムソンに命じた。



