【完結】捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す2〜従騎士になったら王子殿下がめちゃくちゃ甘いんですが?


マリア王女の話にアスター王子が付け加える。

「ああ……ピッツァや貴族から聴いていたとおりだな。最近、貴族の間で怪しげな薬が流行っている、という情報。おそらく、実際に薬物売買が行われているのだろう。そのうえで呪いを掛けてより離れられなくなっている。物理面と精神面。二重の方法で虜にすれば、裏切らないからな」
「……薬物?……バーベイン侯爵が、ですか?」
「まず、間違いない。王都を護るフェニックス騎士団のピッツァが直に乗り込んだということは、もはや疑念の余地がないからだ。バーベイン侯爵には人身売買の疑惑もある。捕まればまず、身分地位すべて剥奪の上、財産領地没収。本人はもちろん、家族だけでなく一族に至るまで、何らかの処罰は免れないだろう」

また、そんな重要な情報を隠して!とアスター王子には怒りたいところだけど……これでは、今はそれどころじゃない。わたしは、一番気になる点を彼に訊いた。

「そうなればやはり……娘のローズ嬢も」
「ああ。良くて国外追放か流刑辺りだろうな」

(ローズ嬢が国外追放……)

正直、気の毒とは思うけど……わたしにはどうしようもない。貴族の処遇や刑罰を決めるのは国王陛下と貴族院と高等裁判所だから、わたしでは口出しできない。

彼女とは親交があるわけではなく、むしろ逢う度に絡まれ難癖をつけ高飛車な態度を取られてきた。印象は良くないし、普通だったら関わろうとは思わないだろう。

……だけど。

今日、ローズ嬢と視線が合った時の。彼女の瞳の揺らめきが忘れられない。

あれには、怯えと恐れと……すがる気持ちを感じた。

彼女は、確かにわたしにも助けを求めていた。