(やはり、ローズ嬢は何かを抱えている)
今日の彼女の思い詰めた雰囲気といい、尋常な様子ではなかった。男爵令嬢であり、彼女にすれば邪魔者のわたしに助けてもらうのは、おそらく屈辱的なのだろう。
でも、それでもなにか言いたげだったのは確かだ。
わたしにすら、助けを求めたくなるような。
だから、わたしは近衛騎士と従騎士である2人に提案をした。
「アスター王子、トムソン。ローズ嬢を探しましょう。彼女にはなにか切羽詰まった様子がありました。この招待状の件を含めて、なるべく早く話を聴いた方がいいかと」
「……そうだな。オレもミリィと同じ考えだ。ピッツァの言ってた疑惑がある以上、バーベイン侯爵の娘ならば無関係ではいられないはずだ」
わたしよりもこういった場に慣れたアスター王子がそう言うならば、もし父親であるバーベイン侯爵が捕まったらローズ嬢もただでは済まないだろう。
「俺、探します!」
トムソンが招待状を握りしめて力強く言った。
「何の理由があって俺に助けを求めたのかわからない。けど、彼女は俺にSOSを出したんだ。ならば、騎士を目指す者としては見捨てられません」
「わかった。だが、この広い侯爵邸でやみくもに探しても効率は悪いし、派手に動けばバーベイン侯爵に知られてしまう。ここはひとつ、作戦を考えよう」
トムソンの情熱に感じ入ったのか、アスター王子は飲み物を手に取り、液体を指につけるとテーブルの上に細長い図を描いた。
「かなり簡略化しているが、バーベイン侯爵邸の大まかな構造だ。よく頭に叩き込んでおけ」



