もしもの可能性だけど、なにか深刻な理由があってローズ嬢自身がトムソンを招待したとしたら?
バーベイン侯爵の悪い噂を聞かされたばかりだから、娘のローズ嬢の行動も含め気になる。これは、わたしの手にあまる案件かもしれない。
だから、トムソンに提案してみた。
「ごめん、わたしだけだと判断しきれないや。アスター王子に相談してみていいかな?」
「ああ、構わない。このまま放置も気分のいいものじゃないから」
トムソンが快諾してくれたから彼を連れ立ってアスター王子の元へ戻ると、あからさまに不機嫌そうになっていて笑えた。本当にわかりやすい人だ。
「ミリィ、その男性は?」
「ぼくの同僚のトムソンですよ?逆に憶えてない方が失礼でしょう」
「そ、そうか…」
すぐほっとしてる単純明快なアスター王子の様子がなんだかかわいいけれども…。
「しっかりしてくださいよ、アスター王子。まあ、あなたがもしボケ…なにかあっても、ぼくはちゃんと面倒見ますから安心してくださいね」
「……今、ボケてると言いかけただろう?」
「え?気のせいですよ。そんな失礼なこと思ってても口に出しませんよ。20歳かそこらでボケてお気の毒にとか……………たぶん」
「たぶんじゃないだろう。思いっきり言ってたぞ」
「あーごめんなさい。口がすべりましたね」
「全然悪いと思ってないだろ……」
いつもの馬鹿げたやり取りの後、アスター王子に例の招待状を見せて事情を説明してみると、やっぱり彼の顔つきが変わった。



