【完結】捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す2〜従騎士になったら王子殿下がめちゃくちゃ甘いんですが?


トムソンはからかわれた、と疑っているみたいだけど…こんな手がこんだやり方でわざわざ無関係の人間を招くとは思えない。しかも、次男とはいえトムソンは伯爵家としては力があるガーランド伯爵家の令息だ。伯爵家を敵に回してまで、こんな悪戯めいた仕掛けをするものか?

(きっとなにか…理由があるんだ。トムソンをこのパーティに招いた理由が)

バーベイン侯爵の封蝋がある以上、侯爵自ら招待したという事になるけれども…なんとなくだけど、彼ならば独身の貴族を招く基準にトムソンは当てはまらない気がする。
ローズ嬢とアスター王子をやたら接近させたがっていたから、きっとアスター王子の妃の地位を狙っていたに違いない。わたしが婚約者とはいえ、王子以上ならば妃は複数持てる。男爵令嬢のわたしよりローズ嬢の方が王太子妃や王妃の地位に相応しいから…と。

(……あ、なんか胸がもやもやする)

なんだか胸のあたりがむかむかする。アスター王子が他の女性となんて考えただけで、嫌な気分になったけれども。それは頭を振って否定した。

(アスター王子は、生涯女性はわたし一人と言ってくださったんだ。わたしは彼を信じる……!)

そうだ、アスター王子は誰よりも信じられる。胸の辺りで手のひらを当てて、ギュッと握りしめた。

(……そうだ。アスター王子がわたしと決めたのだから、バーベイン侯爵やローズ嬢のアピールは無駄なんだ。だけど……ローズ嬢はなんとなく頑なで……以前お会いした時より切羽詰まった様子だった…あれは、なんだったんだろう…)

ローズ嬢の様子を思い出して、ハッと気づいた。
彼女が身に着けていたドレスは赤い。そして、特定のパートナーはいないように見えた。でなければ、アスター王子のエスコートを期待できるはずがない。