通常、こういったパーティにパートナーは必須のはず。出席の返事をしたためる際にはパートナーの名前も記入して、事前に申請しておくはず。だから、普通ならばパートナーを知らないなどあり得ない。

「パートナーがわからない…?どういうこと?前もって申請してあるんじゃないの?」
「いや、それがな…俺に届いた招待状が妙なものだったんだ」

トムソンがポケットにしまっていた招待状を取り出し、差し出してきた。

「……見てもいいの?」
「ああ、むしろ俺一人だとどうも理解しづらくてな…どういうつもりでこんな招待状を出したのか、パートナーは誰なのかを知りたいんだ」
(……ということは、トムソンは本当に一人で来たんだね)
「じゃあ、ちょっと拝見するよ」

トムソンが差し出した封筒には、確かにバーベイン侯爵の印章の封蝋がなされていた。封蝋は当主しか使えないはず。ならば、バーベイン侯爵自ら招待した…ということになるけれど。

封筒から招待状を取り出してみたけれども…一見ごく普通の招待状に見える。
けれども、そのなかにある文章が通常のものと違った。

“パートナーは伴わずお一人様でご参加くださるようお願いいたします”
“パートナーはあなた様を会場にてお待ち申し上げます”
“なお、この内容は誰にも知らせずご参加ください”
“当日は黒い服装でご参加ください。パートナーは赤い服を着ております”

確かに、妙な文章だ。

「……なにこれ?こんな招待状初めて見たよ」
「だろう?だから困っているんだ。そもそも、パートナーがいない女性は参加してないはずだよな?ひと通り見たが、赤いドレスの女性は少ないが皆パートナーはいたし…俺、もしかしてからかわれたのかもしれないな」