どうやら鍛錬が終わったらしく、あちこちで疲労困憊状態の騎士の屍累々…でなく、座り込む騎士が多い。
「カーッ!アスター隊長の訓練はやっぱり厳しいっす!」
さっきアスター王子にレイと呼ばれた、栗毛で中肉中背の男性が鍛錬場で大の字に寝転びながら弱音を吐いたけど、アスター王子は数十人を相手にしたのに汗を軽くかいたくらいで呼吸すら乱れてない。
「こんな程度でバテてたら、実戦では役に立たないぞ。もっと基礎体力作りに精を出せ」
「マジっすか……さらにメニュー増やされたら、死んじまいますよぉ……」
「アスター王子!そろそろ食堂に行かないとお昼ごはん取りそこねますよ」
そろそろかなとタオルを手にしてアスター王子のもとに姿を現すと、わっ!と隊員達がやって来た。
「おお、ミリィか!ランスの扱いは上達したか?」
なぜか大隊の皆さんからわたしは好かれていて、もみくちゃまではいかないけど、周りを取り囲まれる。
「いえ、まだまだです。ぼくも早くガストさんのような無駄のないランス捌きを身に着けたいです」
「ガハハハ!嬉しいこと言うなあ。よし、いっぺん見てやるよ」
「ミリィくん、ミリィくん。ほら、ランスレストの部品。使い古しで悪いけど」
「いえ、わざわざありがとうございます。助かりますよサイさん」
「……おい、食堂行くんだろ?」
不機嫌そうな顔と声音でアスター王子が割り込んできて、ようやく解放される。ぐいっと手首を捕まれ、そのまま強引に輪の中から連れ出された。
「まぁ、隊長嫉妬してるわ〜かわいいー」
という誰かの声が聞こえたような気がする。



