「アスター王子、マリア王女殿下は本気でしょう。わたしとフランクスがしっかり御守りいたしますから。ねえ、フランクス」
「あ、ああ。任せろ。マリア殿下はおれが護る!」
「頼もしいのう。フランクス、よろしく頼むぞ」
「はい、お任せください」

わたしが話を振ると、フランクスは胸に手を当てて頷く。マリア王女も嬉しそうに彼に寄り添って笑った。
ガチガチに固まっていたフランクスも、見知った顔が多いからかだいぶ緊張が解れてきていた。そして気づいたけど、彼のジャケットのタイにメダリオンが飾ってある。当然、マリア王女の肖像画付きだ。
そしてマリア王女の胸もとにあるペンダントにも、フランクスらしい肖像画のメダリオンがあった。

(そっか……フランクス、メダリオンを贈り返したんだね)

それはつまり、マリア王女との婚約を了承したようなもの。
以前、わたしの余計な老婆心でマリア王女との縁談に口を挟んでしまったけれども、フランクスもきっと考えて考えて…マリア王女と自分の心に向き合い何日も悩み抜いた末に決めたんだろう。
今はまだ、わざわざ口に出さなくてもいい。時期が来たらフランクスの方から話してくれるだろう。

アスター王子はため息をついて、渋々異母妹の出席を了承した。

「……そこまで下準備しているならば仕方ない。ただし、絶対に危険な真似はするな。危ないと判断したらすぐに帰す。わかったか?」
「大丈夫じゃ!わらわはドジを踏むほど愚かではないぞ?」
「……そうじゃない」

根本的な問題が解ってないマリア王女だけど、たぶんソニア妃と事前準備してきたんだろう。だからソニア妃は勝手にわたしとアスター王子を出席させたわけか…と妙に納得してしまった。

とにかく、このパーティに出た目的は、バーベイン侯爵の暗部をあぶり出すことだ。ローズ嬢の事を思うと胸が痛むけれども、これ以上ドン・コレッツイの被害者を生むわけにはいかないのだから。