アスター王子が真剣な顔で異母妹へ問い質す。

「マリア、ならなおのこと危険過ぎる。本来ならばすぐにでも帰したいところだが、帰る気はないんだろう?」
「当然じゃ!わらわだとて馬鹿ではない。なんの対策もなく丸腰で乗り込んだと思うてか?」

兄にそう答えたマリア王女は、右手を持ち上げて手首にはめたブレスレットを示す。一見細工が見事な金のブレスレットにしか見えないけれども?

「これは、ソニア妃に頼んで作ってもらったマジックアイテムじゃ!防御魔術と簡単な攻撃魔術が付与されておる。わらわには少ないが魔力があるらしいでな。わらわが念じれば魔術が使えるとのことじゃ」

得意げなマリア王女だけど、いつの間にソニア妃と仲良くなったのやら。
けど、まあ。腹違いのきょうだいとその親とは仲違いするよりは、仲がいいほうが良いに決まってる。

「あとは、わらわの意思を理解した協力者が複数邸内におる。わらわの計画通りにいけば、悪事に加担した証拠をうまく炙り出せるはずじゃ」

にやりと楽しそうに笑うマリア王女は、とても9歳の少女に見えない。事前にそれだけの下準備をしているなんて…さすが彼女を女王に、という声があるのも納得だ。まぁ、彼女自身王位に興味はないと早々に継承権を放棄したけどね。

一応、アスター王子も事前にあれこれ対策はしてあったけれども。さすがにパーティ参加を告げられたのが前日だけあって、かなり急ごしらえの計画になってしまったのは仕方ない。けど、ピッツァさんに加えてマリア王女が協力してくださるなら百人力だ。