「ゴホン、べ、別にそんなことはないぞ!今回のパーティは将来の王太子たる者として、顔を広げるチャンスをだな…」
咳ばらいをしたアスター王子が真面目な顔でそう言うけど、妹と同僚には通じなかったらしい。
「アスター兄上、取って付けたような言い訳しなくてもいいじゃろう。もっと素直になったらどうじゃ?」
「そうそう。ミリィに甘えたいんだ!って素直に言えよ」
ニヤニヤ笑いのマリア王女とピッツァさんにズバッと言われて、アスター王子の体が揺れるのを見た。
「え、アスター王子。ぼくに甘えたいんですか?」
「そ、それはだな……言葉のあやで…」
ピッツァさんに指摘されたことを問いただせば、もごもごとなにやら口のなかで言い訳らしきことを言ってはいるけど…。
「別にいいですけど?……というか、普段からあなたはぼくに頼らなさ過ぎですよ!以前あった魔力からくる発熱の件だって、もっと早く相談してくださればあんな大掛かりな騒ぎにならなかったじゃないですか!」
「……う」
ついつい、日頃からの彼への不満が表に出て、叱りつけるような格好になってしまってた。アスター王子が困惑というか、たじろいでいるのは気のせいです。
「仮にもぼくはあなたの従騎士ですし、それ以上に婚約者なんです。生涯をともにする覚悟があるのですから、どんな小さな事でもちゃんと話してください!遠慮なんかされたら、そちらの方が悲しいんですから。わかりましたか?」
「わ、わかった…」
わたしが腰に手を当ててアスター王子に身を乗り出しながら迫れば、彼はなぜか少し顔を赤らめてボソッと返事をする。それを見たピッツァさんとマリア王女が「天下泰平カカア天下だ」だとか「兄上は尻に敷かれるのが好きじゃのう!」と笑っていたけど。
なんのことだろう?



