やっぱり、マリア王女のとんでもない性格が昨日今日で変わるはずもなかった。
アスター王子は額に手をやり、ため息をつきながら妹へ注意をする。
「……おまえな。仮にも一国の王女なのだから自覚を持て。もしも警備に手薄があったらどうする?」
「兄上とミリュエールがおるではないか。それに何より、フランクスがおるからのぅ。フランクス、わらわを護ってくれるのじゃろ?」
「は、はい。実力不足かもしれませんが…精一杯務めます!」
フランクスは従騎士のお仕着せを着た時よりも緊張し、ガチガチに固くなってた。そりゃそうだ。
いくら幼くても女性と2人と外出なんて初めてだし、相手は王女様だし…その身を責任持って護らねばならない。プレッシャーは相当なものだろう。
(フランクスは女性慣れしてないし、まだ従騎士であって正式な騎士に叙任はされてない。それなのに護衛しろはちょっと無責任だ)
マリア王女のわがままっぷりはいくら聡くても、やはり9歳の少女だ。とはいえ、現にこうして出席している以上は近衛騎士とその従騎士として、王女殿下の身は護るべきだ。
「……わかりました。マリア王女、わたしとアスター王子も近衛騎士と従騎士としてお守りいたします。ですから、なるべくこちらから離れぬようお願いします」
フランクスの負担を緩和するならこれしかない、と思ってそう発言すると、なぜかマリア王女と…黙って見守っていたピッツァさんが口元を緩める……どころではなく、あからさまに顔がニヤついていた。
「見ろよ、アスターのあの残念そうな顔!わかりやすいやつーはははは!」
「ミリュエールと2人きりを邪魔されて不貞腐れたのじゃな。ふふふ」
腹を抱えて笑うピッツァさんだけでなく、マリア王女まで楽しそうでしたが…?



