「ピッツァ、パーティ嫌いなあんたがこれに出席したということは……騎士団の仕事だな?」
今の今まで空気だったアスター王子が周囲に聴こえない程度の小声でピッツァさんに言うと、彼女はニマッと笑った。
「まぁな。バーベイン侯爵はどうもきな臭え噂があるかんな」
「キナ臭い噂…?」
「色々とな。十年くらい経済的に困窮してたはずが、最近になって急に羽振りがよくなったんだよ…で、調べれば怪しさ満点。疑惑のオンパレード。簡単に尻尾は出さねえかもしれないけどな、ひとまずアタシが調査するために来たのさ」
ピッツァさんがあっさり話してくれたのは、たぶんアスター王子が遮音の結界で周囲に聴こえないようにしてくれたのを知ってるからだろう。でなければ、いくらオープンな彼女でも教えてくれなかったに違いない。
「ここだけの話だが……バーベイン侯爵は、ドン・コレッツイファミリーとの関わりがある疑惑がある」
レトムが補足でとんでもない情報をくれた。
「……バーベイン侯爵が?」
にわかには信じられなかった。
当主のバーベイン侯爵はともかく、娘のローズ嬢とはわずかに関わった事があるから。
彼女の親が悪事に手を貸していた疑惑があるとなると…最悪、お家取り潰しになりかねない。
現国王陛下の発案で、王侯貴族は一般市民よりも罪を犯した際の刑罰が重くなった貴族法があるからだ。
国王陛下が発された貴族の身分を保証する特許状の付与を取り消され、身分返上ならまだいい。一族すべて平民へ降格というのもマシだ。罪の重さによっては処刑や流刑国外追放…罪人になれば、様々な刑が待っている。貴族だからと逃れられないんだ。



