なんとなくだけど、レトムがエストアール家の養子入りの話を受けた理由が察せた。
地方へ赴くお父様についていって会った時、彼はいつでも訓練や遊び相手になってくれていたけれども。堅苦しい事が嫌いで、とにかく身体を動かしたいタイプだったからわたしとよく気が合った。
地方領主に仕える騎士の中では抜きん出た実力を誇る彼は、お父様が何度近衛騎士への推薦の話をしても“宮仕えは肩が凝るくらいおカタイから嫌です”なんて蹴っちゃうような人なのに。
半年前、わたしがエストアール家の養子入りの可能性の話をした時も駄目もとだった。貴族は性に合わないと常々口にしていた彼だから、きっと断られると覚悟のうえだったけど…あっさりと承諾されて拍子抜けしたくらいだ。
たぶん、その後にお父様が正式な養子入りの話を持っていったのだろうけど。
(そうか……レトムはピッツァさんが……)
恋愛沙汰には鈍いわたしだけど、これだけわかりやすければさすがにわかる。
レトムは、ピッツァさんが好きなんだ。
彼は、わたしの16歳の誕生日にエストアール家の籍に入り正式に男爵家の人間となる。つまり、わたしの義兄になるんだ。
今、お母様のお腹にいる妹か弟がエストアール家を継がない場合、彼が次期当主となるために。
もしもだけど、レトムがエストアール男爵となりピッツァさんと結婚したら……ピッツァさんが義理の姉になる……ということ。
(……なにそれ。すごく嬉しい)
もともと、ピッツァさんは大好きで憧れる先輩騎士だ。彼女の身内になれるなんて…想像しただけで嬉しすぎる。



