【完結】捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す2〜従騎士になったら王子殿下がめちゃくちゃ甘いんですが?


「あ、ああ。そうだな。一度招待を受けたなら責務を果たさねばな」

アスター王子はいともあっさりと態度を翻した。
やれやれ、とため息をつきたくなるけれど、ひと悶着あるよりはマシかな。

それよりも今問題なのは、頑として譲らない目の前のローズ嬢。青い顔でぶるぶる震えながらも、頑張って立ちふさがっているけど。
なんだか尋常でない様子に見える。


(以前、王宮でお会いした時も高飛車な態度だったけど…ここまではなかったし、わりにあっさり引いていった。今日はどこか思い詰めた様子があるよね)

ドレスをシワになるまで握りしめて仁王立ちするなど、あのときのローズ嬢からは想像もできない。貴族令嬢の中の貴族令嬢という感じだったのに。
紅が乗った綺麗な唇すらわずかに噛み締めているし、紫色の瞳にはわずかに涙が滲んでいる。彼女にとっては相当忍耐力を必要とする事態なんだろう。

「……バーベイン侯爵令嬢、なにかあったのですか?」

本来ならば公の場で階級が下の男爵令嬢から侯爵令嬢へ声を掛けるのは非常識だろうけど、今わたしはアスター王子の婚約者。その立場を利用させてもらうけど、さすがに名前を呼ぶ間でないから家名で。

わたしが小声で声を掛けると、ローズ嬢はハッと我に返ったような顔をしたけど。すぐわたしを睨みつけてきた。

「……し、失礼ですわね!あなたに名前を呼ばれる筋合いはありませんことよ!」