また、だ。
アスター王子はわたしの存在が軽んじられたり馬鹿にされると、豹変してしまう。
今はわたしを背後にしているからどんな顔をしているのかわからないけれども、バーベイン侯爵とローズ嬢が青い顔をしている事から、尋常じゃない笑みをたたえているんだろう。
さすがに侯爵は長年魑魅魍魎の政界にいるだけあり、踏みとどまって平気そうな顔を繕ってはいるけれども。娘のローズ嬢は動揺を露わにカタカタと身体を震わせている。
バーベイン侯爵は揉み手をしながら下手な言い訳を繰り返した。
「い、いいえ……とんでもございませぬ!婚約者どのにも別の歓待をさせていただこうと…決してそのような無礼きわまりない意図はございません」
「特別扱いは結構。私のパートナーはミリィだけですから、他の案内役も不要です。バーベイン侯も多忙の身。他のゲストの歓待をせねばならないのではありませんか?」
「お、おお…そうですな。では、これにて失礼いたしますぞ」
冷や汗をやたらと拭うバーベイン侯爵がそそくさと足早にその場を後にする。やけにあっさりと諦めたな〜と肩透かしをくらった気分だけど……なぜか、娘のローズ嬢が踏みとどまっていた。
「ローズ嬢、案内役は不要ですから…」
「いいえ!」
アスター王子が促そうとしても、ローズ嬢は青い顔のまま叫ぶように拒んだ。
「わたくしは、お父様からアスター殿下の案内役を仰せつかりましたわ。娘として、役割をしっかり果たさねばなりません」



