【完結】捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す2〜従騎士になったら王子殿下がめちゃくちゃ甘いんですが?



やってきたのは、王都にあるバーベイン侯爵のタウンハウス…とはいえ、侯爵レベルだと小さな宮殿と言っても差し支えないレベルの規模を誇る。
もともとバーベイン侯爵は権力志向で、金満主義を地でいくような人物。
侯爵邸も、それを表すようにきらびやかで派手派手しい。明らかに高価そうな美術品を飾ったり、海外産の調度品やキラキラしたシャンデリア。ふかふかすぎる絨毯にこれみよがしに敷かれた狩りの獲物の毛皮。

で、お忍びできたはずのアスター王子を、バーベイン侯爵自らお出迎えしてきた。

「これはこれは、アスター殿下。よくお越しくださいました!歓迎いたしますぞ」
「これは、バーベイン侯。わざわざのお出迎え、ありがとうございます」

馬車の車止まりで大袈裟なほどに両手を広げてニコニコ顔の侯爵は、金糸で刺繍した赤いコートを着て下のズボンもそれに合わせた上質なもの。少し薄くなった赤い髪をなでつけ、でっぷり太った体型はコートじゃ誤魔化せないけど。なんかちょび髭の下の笑みが気持ち悪い…と本能的に感じた。

「さぁさあ、娘もおいでをお待ちしておりました。ローズ、アスター殿下のご案内をなさい」

やはりというべきか、案の定バーベイン侯爵はわたしの存在を霞かなにかのように無視してきた。わかりやす過ぎて笑えるくらいだ。
数ヶ月前にアスター王子の婚約者に相応しくない、と娘のローズ嬢が王宮で絡んできたくらいだ。当然、その親の侯爵は男爵令嬢のわたしがアスター王子の婚約者などとは認められないだろう。
わたしが男爵令嬢…ましてや、レスター王子に婚約破棄されている。そして、騎士を目指している。貴族にとっては攻撃する材料が揃いすぎてるくらいの条件だ。