【完結】捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す2〜従騎士になったら王子殿下がめちゃくちゃ甘いんですが?


ケーキスタンドに盛られたスイーツは、見た目も華やかで美味しいものばかり。たぶん今もっとも人気な流行りのお菓子ばかりだろう。 
だからこそ、わたしの食べた焼菓子の素朴さが目立つ。

「それにしても、このお菓子は地味なので他の地方ではまず見ないんですけど…よく王都で出すお店がありましたね?」
「ご、ゴホン……た、たまたま偶然だろう。うん、よかったな。懐かしい味にあえて」 

わたしが指摘すると、アスター王子はわざとらしい咳ばらいをして目を泳がせる。相変わらず嘘が下手な人だ、と笑えてしまった。
以前はわざと突っ込んだけれども、今は少しだけそんな嘘には付き合った方がいいと理解してる。わたしもほんのちょっとだけ大人になったのかな?

「はい、すごい偶然ですよね。このお菓子が食べられたのはよかったです。ありがとうございます、アスター王子。おかげでリラックスできました」
「そ、そうか……うん。それはよかった……」

アスター王子は、きっと前からわたしの故郷のことを調べて事前にお店にリクエストしてくださったんだろう。去年のピクニックの時のパンやチーズもそうだけど、わたしの故郷では独特の食文化があり、王都ではなかなか手に入りづらいものばかり。
アスター王子はそれでも頑張って用意してくれている…それも、さり気なく。
その心遣いは、涙が出そうなくらいに嬉しい。

挙動不審気味なアスター王子が、なんだか可愛く見えてきて……気がつくと、わたしは彼の大きな手のひらにそっと指先で触れていた。