心身の緊張が解けてゆったりとリラックスできそうな暖かなお茶は、不思議な味わいだけど美味しい。
ほうっと大きな息を吐いたわたしに、アスター王子がケーキスタンドに載ったお菓子を勧めてきた。
「ここはどんな菓子も美味いらしい。食べてみろ」
「あ、はい…いただきます」
3段のケーキスタンドには上から一口サイズになったスイーツ、スコーン、サンドイッチが順に盛られている。
(確か、下のサンドイッチからだったよね)
マリア王女に招かれたお茶会で、多少マナーを学んだかいがあった。軽食から順にいただくんだよね、確か。
そう思い出しながらサンドイッチを手にしようとすると、アスター王子に意外な事を言われた。
「ミリィ、オレと一緒に居る時くらい、マナーやルールは忘れろ。今は公的な場ではないのだから、好きなものを好きなように食べればいい」
「……いいんですか?」
「ああ、オレは構わないし、むしろこんな時まで緊張してほしくない。オレと2人だけの時は、本来の自分に戻って自由に振る舞え」
「……ありがとうございます」
確かに、アスター王子ならばわたしがどんなわがまま勝手をしても許してくれるだろう。この人は、決してわたしを否定しない。むしろ認めてくださるんだ。
じわりと胸が暖かくなり、心臓が心地よいリズムで速くなる。そこに手を当ててふうっと大きく息を吐けば、さらにリラックスして全身から力が抜けていった。



