アスター王子の言葉で、ほんの少しだけ心が軽くなる。
本当に、このひとはいつもどんなわたしでも否定する事はしない。そのうえわたしを理解したアドバイスをくれるんだ。
それが、どれだけ嬉しいか。
「……そう、ですね。焦りすぎるのはぼくの悪い癖ですから……うん、今回ぼくは頑張りました」
「そうだ。少しは自分を認めてやらないと、そのうち息切れしてしまうぞ」
「はい、そうですね…ピッツァさんにも言われてしまいましたし」
同じ言葉をまったく違う騎士から言われてしまうのは、やっぱり良くないことだからだろうな。ひたすら反省するしかない。
「だろう?なんにでも前向きに全力で努力するのはいい事だが、上手に力を抜いたり息抜きをしたりすることも必要だ。
走る時をイメージすればわかるだろう?
長い距離を走る時ほど、ペース配分を考えて走るはずだ。それと一緒だぞ」
アスター王子のアドバイスはありがたい……けど、すみません。わたし毎朝のランニングは最初から最後まで全力ですっ飛ばしていました。
「……息抜き、ですか……正直、ぼくには難しいですね……ついつい色々考えて、自分の足りなさに焦ってしまいます」
エストアール家の家訓は“努力と気合いと根性”だ。
目標を決めたら猪突猛進で突き進むのがお家芸。
とはいえ、わたしは女性には難しい騎士になる目標に加えて王妃になる決意もしてる。だからなおのこと焦りがあるのかもしれない。



