「……大丈夫か、ミリィ。抜け殻のようになっているぞ?」
「すみません…しばらく放心させてください…」
ドレス作りという一番不得手な難題をいくつもこなした後、わたしはアスター王子が言うとおりの状態になっていましたよ。
貴族令嬢ならば幼い頃から日常茶飯事なイベントが、わたしにはどうも苦手で逃げ続けた報い。それでも自分が決めた道だから、と決意をして挑んだミッション……なぜ、貴族令嬢はああいった事が楽しめるのか。その鋼の精神は尊敬すら湧いてくる。
わたしの消耗状態を見たアスター王子がギョッとして、連れて来られたのがタウンハウスの近くにあるハーブティー専門店。ガーデニングを楽しみながらお茶やスイーツも堪能できるティーハウス。ソニア妃お気に入りのお店らしい。
とはいえ肝心のソニア妃はレディアンジェラのお店に残り、ドレスのデザインを詰めたり色々相談してくださるみたいだ。わたしが不甲斐ないばかりに申し訳ないけれど、あれ以上関わるとなるとゾンビになりそうだからお任せしてきた。
「……おまえがこういう事が苦手なのは知っている。だが、2着も作るんだろう?今回はずいぶん頑張ったじゃないか?」
「そう…ですけど。本当ならば、最後まで自分で関わるべきですよね?でも、結局逃げてきてしまいました」
アスター王子が慰めてくださるけれど、どうしても自分の情けなさが目立ってしまう。
「そう言うな。ミリィ、いつも言っているが、おまえはいつも自分を追い込み過ぎる。最初から完璧を目指すな。少しずつでいいんだ。現に一年前は1着のドレスで精一杯だったのに、今回は2着分頑張ったんだ。進歩している、と自分を認めてやれ」



