【完結】捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す2〜従騎士になったら王子殿下がめちゃくちゃ甘いんですが?


「まぁ、そうなれば次の事業を考えるだけですわね」

ミス・アンジェラはため息をつきながらそう言ったけれど、呆れてというふうではなくてむしろ楽しげに見える。

「自分の仕事に誇りはありますけど、働いてる人たちを自分の都合でクビにしたくはありませんからね。逆に言えば、今の仕事が減るならば別の仕事で儲けるチャンスという事です。お金は天下の周りものですから、商機を逃さないようにしますわ」

ふふふ、と笑うミス・アンジェラは根っからの商売人らしい、商魂逞しい女性だった。

そこで、ふと思い出した。
去年の狩猟会であった、密猟事件。
森で会った民間人は、皆ボロボロの格好だった。

わたしが知る限りだけど、大抵の一般国民は服は自前で用意する。ただ、服の大元である布地は高価だ。ゼイレームで繊維業を生業にしている地域は限られているから、どうしても高くならざるを得ない。
だから、経済的に余裕がないと今ある服を着続けるしかないんだ。

「……レディアンジェラ、民間人を商売相手にするつもりはありませんか?」
「え?」
「今、ゼイレームでは布地が高いですよね。ですから、経済的に余裕がないとボロボロの服を着続けるしかない。でも、繊維業が盛んになり布地が安くなれば皆気軽に服を作れるようになると思うんです」