【完結】捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す2〜従騎士になったら王子殿下がめちゃくちゃ甘いんですが?


「まぁ、それでしたら私やお針子たちは失業かもしれませんわね」

レディアンジェラが苦笑いをしながらそう言うので、改めて気付かされた。
一見無駄に思える贅沢でも、裏では仕事を生み出す需要となっていたという当たり前なことに。

食べ物のパンで例えれば小麦を生産する人がいて、収穫された小麦を運ぶ人がいて、その小麦を粉に挽く人がいて、小麦粉を扱う商売人がいて、小麦粉を使いパンを焼く人がいて、さらにそのパンを売る人がいて…ようやく消費する人の手に届く。

つまり、わたしがしたいことは王侯貴族御用達の商売をする人たちの仕事を奪うことにもなるのだ。

それは胸が痛むけれども……

でも、やっぱり。
国庫の主な収入である税収は、国民が汗水たらして働いて納めた貴重なお金だ。それを私利私欲のため身勝手に浪費していいとは思わない。

「……申し訳ありません、レディアンジェラ。ですが、やはりわたしには毎日違うドレスを何着も着るとか、パーティのたびにオートクチュールのドレスを作るとか、自分にはとても合わない贅沢だとしか思えないのです。もちろんあなたにはこれからもお世話になるつもりではありますが、正直仕事は減ると思います」

レディアンジェラにはお世話になっているからこそ、自分の正直な気持ちを打ち明けておいた。