今の国王陛下はよくできたいいお方だ。懐が広く公平で、決して私利私欲で物事を判断しないし、歴代の王の中でも名君だろう。
でも、そんなお方でもどうにもならない事があられた。アスター王子やソニア妃の現状を知りながらも、思うようにできず歯がゆい思いをされてらした。
背負うものが多すぎると、しがらみで動けなくなる。
(そうか……わたしはどこぞの国の姫でも王女でもない。身分としては男爵令嬢ではあるけれども、代々王国の盾として仕えてきた。ゆえに、大貴族との縁はほとんどないけれど、逆を言うならしがらみが少ないんだ)
エストアール家は王国の貴族の中でも最も歴史は古く、さらに初代国王陛下とともにゼイレームを造った功績がある。それ以来代々王国のために武家として仕え活躍してきた。どんな危機でもエストアール家だけは国を裏切ったことはない。たとえ、愚王に背を向けることになっても。
そのエストアール家の娘であるわたしだから、男爵令嬢でも大した反対なく国王陛下はアスター王子との婚約を受け入れてくださったんだ。
(国王陛下も、きっと期待してくださったんだ。アスター王子とわたしで国王と王妃となれば、何かが変わることを)
わたしが王太子妃や王妃としてできることはなにか? きちんと考えなきゃいけない気がした。



