「わたしが変えるんですか?」
「そうよぉ。王妃になるってことは、国王陛下に次ぐ地位に就くということだもの。国内の女性の最高の地位よ。他の妃はただの妻だけど、正妃である王妃ならばできる事はたくさんあるわ、そのぶん責任も役割も大きくなっちゃうからぁ、わたくしは面倒くさくて嫌だけどね」

良いことを言っていたのに、最後は本音がダダ漏れで台無しになるのがさすがソニア妃。

だけど、確かに彼女の言うとおりだ。

王妃という地位は、生半可な覚悟で就けるものじゃない。

他とは比較にならない権力を持つことにもなるんだ。

ソニア妃なりの覚悟を持て、というメッセージなんだろう。

(覚悟……か。わたしもそれなりに覚悟してきたつもりだけど……)

ただでさえ、わたしは女性では困難な騎士にもなろうとしているんだ。それに加えて王妃を目指すなんて誰が考えても困難な道のりだろう。

(でも……諦めたら駄目だ。一度決めたら、それに向かって努力するのみ)

一度胸の前で組んだ両手を強く握りしめ、ふうっと大きく息を吐く。そして、隣のソニア妃の目をまっすぐ見据えて答えた。

「はい。おかしいと思ったことは、どんどん変えていきたいと思います。自分たちだけ贅沢三昧するでなく、困窮する民のためにも……」

去年の狩猟会。御料地である狩猟地では、地元民が密猟に関わっていた。
貧しさのあまりに、御料地とは知らず獲物密猟に手を出してしまったんだ。

あのとき、自分の無力さと非力さを嫌でも自覚せざるを得なかった。